077-572-5255歯周病治療
歯を失う原因の第一位「歯周病」から歯を守る
生涯ご自身の歯で食事を楽しみ、豊かな人生を送ることは多くの方の願いです。
その実現を阻む大きな原因となるのが「歯周病」です。歯周病は歯を支える土台である歯ぐき（歯肉）や骨（歯槽骨）が、細菌によって静かに破壊されていく病気です。
日本では成人の半数以上が罹患しているともいわれ、誰にとっても決して他人事ではありません。
むし歯と異なり、初期から中期にかけては痛みなどの自覚症状がほとんどないのが歯周病の怖い特徴です。「沈黙の病気（サイレント・ディジーズ）」とも呼ばれ、異変に気づいた時にはすでに大きく進行してしまっていることも少なくありません。
進行すると歯がぐらつき、最終的には歯が抜け落ちてしまうことにつながります。
大切な歯を一本でも多く守るために、歯周病の正しい知識を持ち早期発見・早期治療に努めることが重要です。
歯周病の進行
歯周病はお口の中に存在する細菌の塊、歯垢（プラーク）が原因で引き起こされる感染症です。
歯と歯ぐきの境目に残った歯垢の中で細菌が増殖し、歯ぐきに炎症を引き起こします。これが歯周病の始まりである「歯肉炎」です。
この段階ではまだ、歯を支える骨の破壊は起きていません。しかし歯肉炎を放置すると、炎症は歯ぐきの奥深くまで広がり歯を支える骨を溶かし始めます。この状態が「歯周炎」です。
一度溶けてしまった骨は、基本的には元に戻ることはありません。歯周病の進行を食い止め、お口の健康を維持するためには歯科医院での専門的な介入が不可欠となります。
歯周病のセルフチェック
ご自身のお口の状態を注意深く観察してみましょう。
以下のようなサインは歯周病が始まっている、あるいは進行している可能性を示しています。
- 歯磨きの際、歯ぐきから血が出ることがある
- 歯ぐきが赤く腫れている部分がある
- 以前より歯が長くなったように感じる
- 歯ぐきがむずがゆい、または痛みを感じる
- 口臭が気になる、あるいは他人に指摘された
- 歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなった
- 朝起きた時、お口の中がネバネバする
- 硬いものが噛みにくくなった
- 歯がぐらぐらと動く感じがする
これらの項目に一つでも当てはまる場合は、注意が必要です。
特に複数の項目に心当たりがある方は、できるだけ早く歯科医院にご相談ください。
歯周病もむし歯と同様、早期の対応がご自身の歯を守る上で何よりも大切になります。
歯周病の進行段階について
歯周病はその進行度合いによって、大きく4つの段階に分けられます。
ご自身の状態を正しく知ることが、治療への第一歩です。
| 段階 | 歯周ポケット | 主な症状 | 治療・対応 |
|---|---|---|---|
| 正常な歯周組織 | 1～2mm | 健康な薄いピンク色、出血なし | 日常的な歯磨き |
| 歯肉炎 | 2～3mm | 歯ぐきの赤み・腫れ、出血しやすい | 丁寧な歯磨き・クリーニング |
| 軽度歯周炎 | 3～5mm | 骨が溶け始める、冷たい水がしみる | 専門的な歯石除去 |
| 中等度歯周炎 | 4～7mm | 歯のぐらつき、歯ぐきが下がる | 深部の歯石除去、外科処置 |
| 重度歯周炎 | 6mm以上 | 大きなぐらつき、自然脱落の可能性 | 抜歯が必要な場合も |
正常な歯周組織
健康な歯ぐきは引き締まった薄いピンク色をしています。
歯と歯ぐきの間の溝（歯周ポケット）の深さは1～2mm程度で、歯磨きなどで出血することはほとんどありません。
歯を支える骨にも異常は見られません。
歯肉炎
歯垢の影響で、歯ぐきにのみ炎症が起きている状態です。
歯ぐきが赤みを帯びて少し腫れ、歯磨きなどの刺激で出血しやすくなります。
この段階では歯を支える骨に影響は出ていません。
毎日の丁寧な歯磨きと、歯科医院でのクリーニングによって歯垢や歯石を取り除くことで健康な状態に回復することが可能です。
軽度歯周炎
炎症が歯ぐきの奥まで広がり、歯を支える骨が溶け始めた状態です。
歯周ポケットの深さは3～5mm程度になります。歯ぐきの腫れや出血に加え、冷たい水がしみることがあります。
この段階から骨の後戻りは難しくなります。
中等度歯周炎
骨の破壊がさらに進み、歯を支える骨の半分近くが失われた状態です。
歯周ポケットは4～7mm程度まで深くなります。
歯がぐらつき始め、歯ぐきが下がって歯が長く見えるようになります。
口臭が強くなったり、歯ぐきから膿が出たりすることもあります。
重度歯周炎
歯を支える骨の半分以上が失われ、歯が大きくぐらつく状態です。
歯周ポケットは6mm以上と非常に深くなります。
硬いものが噛めなくなり、食事に支障をきたします。
歯ぐきは頻繁に腫れ、自然に歯が抜け落ちてしまうこともあります。
この段階に至ると歯を残すことが難しくなり、抜歯が必要となる可能性が高まります。
歯周病と全身の健康との関わり
歯周病はお口の中だけの問題ではありません。
歯周病菌や、歯ぐきの炎症によって生み出される物質が歯ぐきの血管から体内に入り込み、血液の流れに乗って全身を巡ります。
そして全身の様々な場所で、新たな病気を引き起こしたり既存の病状を悪化させたりする要因となることが近年の研究で明らかになっています。
歯周病が影響を及ぼすといわれる主な疾患
- 糖尿病
歯周病は糖尿病の合併症の一つとされています。また歯周病を治療すると、血糖値のコントロールが改善する例も報告されています。 - 心臓・血管の疾患
歯周病菌の刺激によって動脈硬化が進み、心筋梗塞や狭心症のリスクを高める可能性が指摘されています。 - 誤嚥性肺炎
唾液に含まれた歯周病菌が誤って気管や肺に入ることで引き起こされる肺炎です。特にご高齢の方では注意が必要です。 - 早産・低体重児出産
妊娠中の女性が歯周病にかかっていると、早産や低体重児出産のリスクが高まることが分かっています。
お口の中を清潔に保つことは歯周病の予防だけでなく、全身の健康を守ることにも直結しているのです。
当院の歯周病治療
歯周病治療の基本は原因である歯垢と、歯垢が硬くなった歯石を徹底的に取り除くことです。
当院では患者様のお口の状態を正確に把握し、一人ひとりに合わせた治療計画を立てて進めていきます。
基本的な歯周病治療
まず歯周ポケットの深さの測定、レントゲン撮影などを行い歯周病の進行度合いを精密に検査します。
その結果をもとに、治療の基本となるスケーリング（歯石除去）を行います。
スケーリングではスケーラーと呼ばれる専用の器具を使い、歯の表面や歯ぐきの浅い部分に付着した歯石を取り除きます。
さらに歯周ポケットの奥深く、歯の根に付着した歯石や汚染された部分を取り除くスケーリング・ルートプレーニング（SRP）という処置も行います。
これらの処置と並行して、日々の歯磨きの方法を確認しより効果的なセルフケアができるようお手伝いします。
進行した場合の外科的な処置
基本的な治療を行っても改善が見られない深い歯周ポケットが残る場合には、外科的な処置を検討することもあります。
歯周ポケット掻爬（そうは）術やフラップ手術といった方法で、歯の根の深い部分に付着した歯石や感染した組織を直接目で確認しながら取り除き清掃しやすい環境を整えます。
治療後のメンテナンスの重要性
歯周病は治療が終了しても、その後のケアを怠ると容易に再発してしまう病気です。
治療によって改善したお口の状態を長く維持していくためには、ご家庭での日々のケアと歯科医院での定期的なメンテナンスが両輪となります。
メンテナンスでは歯周ポケットの深さのチェック、歯のクリーニング、歯磨きの再確認などを行い再発の兆候を早期に発見し、悪化を防ぎます。
大切な歯を歯周病から守るために
歯周病は生活習慣と密接に関わる病気です。
予防の基本は原因となる歯垢を、ご自身でしっかりと取り除くことにあります。
毎日の歯ブラシに加えて、デンタルフロスや歯間ブラシを使い歯と歯の間の汚れを落とす習慣を身につけましょう。
しかしご自身のケアだけでは、どうしても限界があります。磨き残した歯垢はやがて歯石となり、歯磨きでは取り除けなくなってしまいます。
定期的に歯科医院へお越しいただき、専門家による検診とクリーニングを受けることが歯周病予防の確実な方法です。
ご自身の歯の状態に少しでも不安を感じたら、どうか放置なさらないでください。
皆様が末永くご自身の歯で健康な毎日を送れるよう、私たちが責任をもってサポートいたします。