虫歯治療
大切な歯をむし歯から守るために
お口の健康は健やかな毎日を送るための大切な基盤ですしかし多くの方を悩ませるお口のトラブルの一つに、「むし歯」が挙げられます。
むし歯はごく初期の段階では、痛みをはじめとする自覚症状がほとんどありません。見た目にも変化が分かりにくいため、ご自身で気づくことは難しいものです。
そして一度進行してしまったむし歯は、痛みが引いたとしても自然に治ることは決してありません。
だからこそむし歯は、なってから治すのではなく、なる前に防ぐ「予防」が何よりも重要になります。
もちろんできてしまったむし歯を放置することは、お口全体の健康を損なう原因となります。
早期に発見し適切な処置を行うことで、歯への負担を最小限に抑え、歯そのものの寿命を延ばすことが可能です。
ご家庭での日々の丁寧な歯磨きと、歯科医院での定期的な検診やクリーニング。
この二つをきちんと両立させることが、むし歯のリスクを減らし、生涯にわたってご自身の歯を健康に保つための鍵となります。
むし歯が進行する仕組み

むし歯は特定の細菌が作り出す酸によって、歯が溶かされてしまう病気です。お口の中には原因となる細菌が存在しています。この細菌が食べ物や飲み物に含まれる糖分を栄養にして増殖し、酸を排出します。
通常お口の中では唾液の働きによって酸が中和され、歯の表面が修復されています。
しかし糖分を頻繁に摂取したり、歯磨きが不十分で細菌の塊である歯垢(プラーク)が残っていたりすると、酸が作られ続け、歯の修復が追い付かなくなります。
この状態が続くと歯の表面からカルシウムなどの成分が溶け出し、やがて穴が開いてしまうのです。
これがむし歯の始まりです。
むし歯のセルフチェック
ご自身の歯の状態や生活習慣を振り返ってみましょう。
思いあたることがある場合、むし歯のリスクが高まっている可能性があります。

チェック項目
- 一日の歯みがきの回数が2回以下である
- 甘いものや間食を摂る機会が多い
- 歯が抜けたままになっている箇所がある
- お口の中が乾きやすいと感じる
- 歯の表面に白く濁った部分や、茶色・黒っぽい部分がある
- 食べ物や冷たいものが歯にしみることがある
- 歯と歯の間に食べ物が挟まりやすい
これらの項目に当てはまる数が多いほど、注意が必要です。
むし歯は何よりも早期発見と早期治療が大切になります。
少しでも気になる症状があれば自己判断なさらず、一度ご相談ください。
むし歯の進行段階と処置の流れ

むし歯は進行度合いによって、C0からC4までの段階に分けられます。
進行が浅いほど歯を削る量を少なく抑えられ、処置にかかる時間や回数も少なくなります。
| 段階 | 状態 | 症状 | 治療法 |
|---|---|---|---|
| C0 | 初期のむし歯 | 白く濁る、痛みなし | フッ素塗布、適切な歯磨き |
| C1 | エナメル質のむし歯 | 冷たいものが稀にしみる | 樹脂(レジン)で修復 |
| C2 | 象牙質のむし歯 | 冷たいもの、甘いものがしみる | 詰め物(インレー)装着 |
| C3 | 神経まで達したむし歯 | 激しい痛み | 根管治療、被せ物(クラウン) |
| C4 | 歯の根だけが残った状態 | 神経が死に、膿が溜まる | 多くの場合抜歯 |
C0:初期のむし歯
歯の表面のエナメル質が溶け始め、透明感が失われて白く濁って見える状態です。
まだ穴は開いておらず、痛みなどの自覚症状もありません。この段階では歯を削る必要はありません。
適切な歯磨きやフッ素の塗布などによって、歯の再石灰化(歯の成分が元に戻ろうとする力)を促し、進行を食い止めることを目指します。
C1:エナメル質のむし歯
歯の表面を覆うエナメル質に、小さな穴が開いた状態です。痛みを感じることはほとんどなく、冷たいものが稀にしみる程度です。
この段階ではむし歯に侵された部分のみを最小限削り、歯科用の白い樹脂(レジン)を詰めて修復します。
C2:象牙質のむし歯
むし歯がエナメル質の内側にある象牙質まで達した状態です。象牙質はエナメル質よりも柔らかいため、むし歯の進行が速くなります。
冷たいものや甘いものがしみたり、痛みを感じたりするようになります。
むし歯の部分を削り、範囲が小さければ樹脂(レジン)を詰めます。
範囲が広い場合は削った部分の型を採り、詰め物(インレー)を作製して装着します。
C3:神経まで達したむし歯
むし歯が歯の内部にある神経(歯髄)にまで到達した状態です。何もしなくてもズキズキと激しい痛みを感じることが多くなります。
この段階では歯の神経を取り除き、根管の中を清掃・消毒する処置(根管治療)が必要となります。
処置後は歯の根がきれいな状態になったことを確認してから、土台を立て、被せ物(クラウン)を装着して歯の機能を補います。
C4:歯の根だけが残った状態
歯の大部分が溶けてなくなり、根の部分だけが残った状態です。
神経が死んでしまうため、激しい痛みは一旦なくなります。しかし根の先に膿が溜まると、再び強い痛みや歯ぐきの腫れを引き起こします。
この状態になると多くの場合、歯を残すことができず、抜歯という選択をせざるを得ません。
当院のむし歯治療における考え方
私たちは患者様一人ひとりのお口の状態と真摯に向き合い、丁寧な処置を心がけています。
歯をできる限り残す

一度削ってしまった歯は、元に戻ることはありません。
治療のために歯を削ることは必要ですが、削る量が多くなればなるほど、歯の寿命は短くなってしまいます。
私たちはむし歯に侵された部分を的確に見極め、健康な歯質をできる限り削らない、精密な処置を追求します。ご自身の歯を一本でも多く、一日でも長く保つためのお手伝いをいたします。
痛みをなるべく抑える治療

歯科治療に対して「痛い」「怖い」という印象をお持ちの方は少なくありません。
私たちはそのような不安を少しでも和らげるために、痛みに配慮した処置を徹底しています。
麻酔注射を行う前には歯ぐきの表面に麻酔薬を塗り、針が刺さる時の痛みを軽減します。
また麻酔液を注入する際も、一定の速度でゆっくりと行うことで、圧迫による不快感を抑えるよう努めております。
治療中に痛みを感じた場合は決して我慢なさらず、すぐにお知らせください。
分かりやすい説明

治療を始める前には現在のお口の状態、具体的な治療計画、期間や費用について、分かりやすい言葉で丁寧にご説明します。
レントゲン写真や図などを用いながら、視覚的にもご理解いただきやすいように工夫を凝らしております。患者様にご自身の状態を正しく理解していただき、納得していただいた上で治療を進めていくことが、信頼関係の第一歩であると考えております。
疑問や不安な点がございましたら、どのようなことでも遠慮なくご質問ください。
むし歯を防ぐための基本的な考え方
むし歯はいくつかの要因が重なって発生します。
そのためむし歯の予防も、一つの方法だけではなく、多角的な視点からアプローチすることが効果的です。
歯質そのものを強くする

歯の質は人それぞれ異なります。酸に溶けやすい歯質、溶けにくい歯質があるのです。
歯質を強くし、むし歯への抵抗力を高める方法として、フッ素の活用が挙げられます。
フッ素には歯の再石灰化を促進し、歯の表面を酸に溶けにくい構造に変える働きがあります。
歯科医院で定期的に高濃度のフッ素を塗布することや、ご家庭でフッ素配合の歯磨き剤を使用することが有効です。
特に生え変わったばかりの永久歯は歯質が未熟でむし歯になりやすいため、奥歯の溝を樹脂で埋めるシーラントという予防処置も効果が期待できます。
原因となる細菌を取り除く

むし歯の原因は歯垢(プラーク)という細菌の塊です。この歯垢を毎日の歯磨きで丁寧に取り除くことが、予防の基本中の基本となります。しかしご自身の歯磨きだけでは、どうしても磨き残しが出てしまいます。
特に歯と歯の間や、歯と歯ぐきの境目、奥歯の複雑な溝などは、汚れが溜まりやすい場所です
歯科医院での定期的なクリーニングでは専門の器具を用いて、ご自身では落としきれない歯垢や歯石を徹底的に除去します。
歯の表面を滑らかに磨き上げることで、汚れが再付着しにくい状態を保ちます。
食生活を見直す

むし歯菌の栄養源は糖分です。甘いお菓子やジュースを頻繁に口にすると、お口の中が酸性の状態になる時間が長くなり、むし歯のリスクが高まります。
大切なのは糖分を完全に断つことではなく、摂取する時間や回数を決めることです。
食事や間食は時間を決めて摂り、だらだらと食べ続ける習慣は避けましょう。
食事の際はよく噛むことを意識してください。よく噛むことで唾液の分泌が促されます。
唾液にはお口の中の酸を中和したり、汚れを洗い流したりする大切な働きがあります。
栄養バランスの取れた食事を心がけることも、健康な歯を育む上で重要です。
健康な歯で、より良い毎日を送るために

むし歯の治療が終わった後も、それで安心というわけではありません。治療した歯は健康な歯に比べて、むし歯が再発しやすい傾向にあります。
大切なのは治療後の良好な状態を、いかに維持していくかということです。そのためにはご家庭でのセルフケアと、歯科医院でのプロフェッショナルケアを継続していくことが不可欠です。
お口に関するお悩みや気になることがございましたら、小さなことでも構いません。どうぞお気軽にご相談ください。
皆様が健康な歯で、笑顔あふれる毎日を送れますよう、全力でサポートいたします。

077-572-5255